インターネット集積場

小説と駄文と感想を書くつもりです。

合宿体験

 合宿、二泊三日。行ってきました。

 気温も落ち始めた九月の下旬。ぎりぎり夏が残っているうちに合宿に行けたのですが、これはよかったことなのか。確かに風流は感じられたのですが、旅先で暑さを感じる不快感と天秤にかけてみると、なんだか損をした気もします。

 場所は熱海で、大学の部活動の一環として行きました。初日は観光とBBQ、二日目は山奥のコテージで一日中駄弁りながらビブリオバトルしたり合評会したりカレー作ったりとだらだらしましたね。三日目の夜、都心の駅から一人山手線に揺られる帰り道。雨が降っていたのも相まって、ずいぶんさみしい思いをしたことを覚えています。帰宅後は久々に雨音に身をまかせて寝たのですが、目が覚めると一気に気温が下がっていて驚きましたよ。「夏が終わったんだな」と思いながら、クーラーを消して朝の空気をすうと秋のにおいがしましたね。季節のにおいが具体的にどんなものなのか未だに説明できないのですが、漠然とそう感じるんです。

 話がそれました。

 ちなみになんですが、僕はこれが初めての合宿だったんですよ。なんなら学校の修学旅行とかも発熱やらコロナやらで全然行けてないので、実質初めてといってもいい宿泊イベントなわけです。それはもう当然楽しみなわけですが、大学生にもなると心配の方が大きくなります。「部員とは言え、二日間も家族以外と床を同じくするのは……」という、漠然とした不安感が旅前にはありました。厄介なもので、純粋に楽しもうとしない自分がすぐに顔を出してくる。心の安寧を図るために、すべてを厭世的にみる自分の側面を、ストレスへの防衛機構として生み出してしまっているんです。

 ま、結果としては全然そんなことありませんでした。大学生にもなるとみんなある程度の良識は持っているようで、二日程度では負担にもならなかったですね。

 それでここから本題。僕が合宿中のふとした瞬間に家庭を幻視したという話です。もちろん実際に幻覚を見たわけではありません。しかし、僕が望む家庭というものが垣間見えたんです。それは同時に郷愁だったかもしれません。

「頼れる大人がいて、話の合う同年代がいて、従妹や親戚みたいな距離感の人もいる」

 僕は長いこと家庭の存在自体を否定してきたんですが、それは結局この状況を求めていただけだったのかもしれないんです。僕はもう随分早い時から家族団らんや親戚集まりというものと無縁になってしまったものですから、それがどんなものなのかいまいち理解していませんでした。今からそれを取り戻したいとは思いませんが、そういった空間が人間には必要なんだなとは思います。

 それぐらいには満たされた時間でしたね。ずっと逆張り精神で突っ張ってきたのを、やんわりと宥められた気分です。もしかしたら、反省以外の方法で反骨精神が治ったのは初めてかもしれません。ペンを取れば毒親を書いてしまう衝動も心なしか収まった気がします。ロック精神とは対象から離れていくより、むしろそれを求める心の動きなのかもしれません。

 大学生になってから、なんだか良くも悪くも視界が広くなった気がします。そのせいで、そしてそのおかげで、ますます自分が不安定になったように、同時に成長しているように感じます。それはこうして文章を書き始めたからかもしれません。いずれにせよ、僕はこの生活が気に入ってきています。

「これって合宿体験記ってより、卒業文集みたいじゃん。いいの? これ見返したら絶対恥ずかしくなるよ? 百パーデジタルタトゥーだってこれ」

「でもこういう大切なことは文章にしたいなって思うんだよ。自分の言葉って、結構な思い出になるし、残しておくに越したことはないはず」

「ふーん」

『カロリー・メイト』について

「浸透圧のせいだ」

 当ブログに投稿する作品としては、二作目になります、こちらの『カロリー・メイト』。次に投稿するのは作品の感想か、長編小説にしてかったのですが、作れてしまったのだからしょうがない。創作はどこかで供養しないと、先に進めないので。

 

 さて、こちらの作品ですが、微BLとなっております。このジャンルに詳しいわけではないのでもしかしたら違うのかもしれませんが、そういう要素は含んでいると思われます。

 自分がBLについて創作するのは、これが初めてというわけではありません。所属中の団体や、個人的なものであれば、結構同性愛の話なんかも考えています。というか普通の恋愛の方が書けないんです……

 今回の話を書くに至った経緯ですが、これは村上春樹さんの作品『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだことがすべての始まりです。読んで下さった人の中には(読者などいない)、「なんか村上春樹に憧れてる痛い文章だな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ええ、はい。完全にそうです。

 アルコール類の描写、小難しい語彙(まじでごめんなさい。僕の独りよがりです)、そして「やれやれ」というセリフ。完全に影響されています。普通なら痛すぎて、黒歴史になる前に封印していますが、ここにはどうせ誰も来ません。んなもんで、ここを作品の墓場として、戒めとアルバム替わりに使います。お許しを!

 さて、そんな本作ですが、もとはBLにするつもりはありませんでした。僕個人のカロ○ーメ○トへの熱い思いを、ハードボイルド風に語らせるつもりだったんです。「無味乾燥でなにが悪い」という主題にするつもりだったわけですね。しかしモノローグだけで全てを書いたら、それは僕のエッセイになってしまう。それなら対話相手を出して、ハードボイルドな会話をさせよう! となりまして、気づいたらBLになっていました。

 なぜ……? ってわけでもなくてですね、僕自身の女々しいところが、栄養機能食品を好むという嗜好につながっていることは薄々わかっていたので、こうなるのも仕方ないか、と思っていました。

 浸透圧の下りに関しては、筆を進めるうちに思いつきました。より濃い存在に希釈されないために、自分より薄い存在を食う。いわば弱肉強食的な構造を僕の趣味に見出したんです。それをそのまま書くのも面白くないので、パンチの聞いたワードを出そうとした結果、浸透圧に行きつきました。なかなか自分でも気に入っている例えです。

  一応解説をすると、「僕」と「彼」はセックス・フレンド以上、恋人未満な関係です。彼らはお互いの内面に、性行為以上の魅力を見出していますが、そこが限度でもあります。事実、「彼」の方が「僕」よりも向ける愛情が薄いです。それはもちろん「誰かの存在で成り立つ僕」より、「彼」の方が自我が強いからですね。この場合は僕の「愛情」が濃すぎるというべきか……ちなみに「僕」は多分、強い感情に流されまいとするために必死に「ハードボイルド」を演じています。わあ!現実の僕みたいだ()

 つまりこれは「僕」が自我を持たない限り、愛情の差が埋まることはなく、自我を持つためには「彼」と一緒にいてはいけない、というデッドエンド状態なわけです。毎回こんな暗い話を書いてしまうのですが、別に作中にそれを出しているわけではないから大丈夫なはず。

 

 後は工夫したところの話を少しだけ。

 まずはナッツの描写、特にピスタチオの部分ですね。ここまでの「心の殻」と重ね合わせて、内心をぶちまけるのと、心を開くことを暗示的に示しています。

 次に一人称と二人称のギャップ。攻めの方が丁寧で、受けがぶっきらぼうな方が新鮮でいいかなと。余裕と強がってる感も表現していたりします。

 最後に「僕」と「栄養機能食品」の重ね合わせ。「僕が彼のカロリー・メイト(補助)でありたい」という願いと、「彼は僕にとってのカロリー・メイト(熱量のある思い人)だ」という恋心のダブルミーニングのような感じです。

  

 さて、こんなところですかね。突発的に書いたとして話としては、ある程度まとめられたと思います。多分読書してたおかげです。

 それはそうと、いい加減長編書きます……手は付けているので頑張ります……

 それでは

「いずれにせよ、君の作品はハードボイルドとは言えないし、これもブログとは言えないな」

 やれやれ

カロリー・メイト

カロリー・メイト

土乃目きこ

 

「なんだって君はいつもそればかり食べているんだ?」

 彼は僕の持つ栄養機能食品を指さしてそう言った。

「お前もついにか」

 僕は短くそう返す。僕と交友を持った人間は必ず僕の食生活に言及してくるのだが、たいていそれは一か月やそこらで起こるのだが、彼はずいぶんと時間がかかった。

 一か月と言うのは互いにまとわりついている――あるいは意識的につけている――固い角質のようなものが剥がれ落ちるのに十分な時間である。その中にあるのは几帳面さや食に対するポリシーや、エピキュリアンな一面であるかもしれないし、もしくは趣味嗜好への無頓着さや、体型を崩すまいとするストイックさかもしれない。好むと好まざるとにかかわらず、僕は後者の方に見られることが多いのだが。

「僕の知る限り、お前が一番遅かった。この質問を聞かれるまでに一年と二か月かかったのは初めてかもしれない」

 一年と二か月もあると、人間は互いに、相手のさらに奥深いところに触れることができる。そしてだいたいは、さらに厳重に折り重なった角質に触れることになる。深まれば深まるほど、相手から遠ざかっていく気がするのだ。

 心と言うのは玉ねぎなのかもしれない。僕は彼の頬張るホットドッグにかかったフライドオニオンを見てそう思った。どこまでが外皮で、どこからが玉ねぎなのか。どこまでも行けば、結局行きつくのは無であるような気がしてならない。自炊をする人であれば、玉ねぎとういうものがおおよそどの部位から構成されているか分かるのだろうが、なんせ僕は自炊をしないのだ。

「栄養の問題?」

 彼は僕のこれまでの人間関係などどうでもいいというように聞いてきた。まだ二口しか食べていないホットドッグはすでに半分以上無くなっている。口、というか、彼は全身が大きい。

「最初はそうだったけど、今は違う」

 僕は目の前にある黄色い箱の裏面を見つめた。なにやらごちゃごちゃと数字が並んでいるが、どうでもいいことだ。確かに僕は健康に気を使っているし、糖質や脂質に関しては摂取量を調節したりもしている。けどそれは本質的な問題じゃない、

「ちなみに、味が気に入っているとか、値段の問題でもないよ」

光沢のある二袋のパッケージ。中には二本ずつ、つまり計四本の棒状の固形物が入っている。目の前にあるのは茶色であるが、肌色の時もあるし、紫色の粒が混入している時もある。特にこだわりはない。それと、値段が多少高くなろうと僕はドラッグ・ストアでこれを買い続けるだろう。

「解せないな。俺の見る限りでは、君はそれを望んで食べているように思える。ずうと同じルーティンのなかで生きる人間と言うのは、たいていそこに惰性が見えてくるものだけど、君はどういうわけかそうじゃない。毎回それを意識的に選んでいるように見えるんだ。俺が今日、悩むに悩んでホットドッグを選んだように、君も君自身の意思決定の元でそれを選んだんじゃないか?」

 彼はガサツな男だが、妙な洞察力を持ち合わせている。先ほどから床にボロボロとトッピングを溢しているのには注意を払わない癖に、無味乾燥と評されるような僕に対して異常な観察眼で分析をしている。事実彼の眼には研究者を思わせるような迫力があった。

欲を言えば、その鋭いまなざしを床にも向けてほしいものだ。ここは僕の家なのだから。

「僕自身も分かっていないんだ。本当のところはね。けど最近色々と考えてみたら、少しだけど理論のようなものが作れたから、それでよければ話すよ」

「長くなる?」

「分からないな。でも、理論と言うものは長いものだと思う」

「じゃあ飲み物がいるな。ジンよりかはウイスキーがいいし、ウイスキーよりかはビールがいい」

「瓶ビールがあるけど。それでもいい?」

「いいね。君は?」

「お前が飲むなら」

 

 僕がハイネケンの蓋を抜いて二人分のグラスに注ごうとすると、「そのままでいい」と彼は言い、そのまま台所を物色し始めた。早いもので、彼はすでに二本目のホットドッグを食べ終えていた。

僕はグラスに注ぐ行為そのものが好きなので、自分の分だけ注いだ。体内音のような小気味良い音が耳に反響する。何かが満たされる音というのは自分も満たされるような気にさせてくれるのだ。

「こだわる男だよな。君は」

 彼は輪ゴムで留められたミックスナッツの袋と、ソーダ・クラッカーを持ってきた。

「しかし、この家には乾き物が多いな。さっき食べていたのもそうだが、それも『こだわり』なのかい?』

「こだわりと言うか、理論なんだ。これが」

「すると、君があの『リベリオン』に出てくるような、ディストピアじみた固形食を食うのも、乾物が好きだからか?」

「そうだよ。好きではないけど、安心するんだ」

「安心?」

 彼は眉をひそめて瓶ビールに口をつけた。いちいち乾杯をしないところが僕は結構好きである。

「乾物って、心無いように見えるだろ?」

「それは乾いているって言葉に、君のクオリアが引っ張られているんじゃないのか」

「そうかもしれない」

 僕もグラスを開ける勢いでハイネケンを飲む。苦いが、人が隣にいると不思議と美味く思える。あるいは、彼が上手そうに飲むからかもしれない。そもそも、普段飲まないビールを置いているのも、彼が足繫く僕の家に通うからなのだが。

「でも、これは事実なんだけど」

 ナッツを皿に広げて、アーモンドを手に取った。その表面は乾いている。

「僕の心は、心無いものを摂取したときに、ひどく安寧を感じるんだ。逆にだけど、心のこもったもの、手料理とかね。そういうものを口にすると、とても心が空虚になって、痛みが湧いてくるんだ」

 彼は口を挟まず、じっと僕を見た。大丈夫。まだ説明するさ。

「最初はこれが罪悪感だと思っていた。幸せになることへの恐怖と言うか、ストイシズムからくるものだと思っていたんだ。でも、多分そうじゃない」

「多分」

 彼は僕を追求するように言った。彼は要領を得ない話と、自身のない人間が嫌いだと、以前に言っていた。

「許してくれよ。自分のことを断言できる人間なんてまずいないし、断言できる奴は信用できないと僕は思うんだ」

「なんだっていいさ。それで、君の心の空虚さと痛みの原因は?」

 やれやれ、と僕は心の中で言った。彼の強情さは嫌いではないし、寧ろ好きな方だ。だがこうして詰問されると、緊張してしまう。

 僕はピスタチオの殻をむいてから、ゆっくりと言った。

「浸透圧のせいだ」

「シントウアツ」

 彼は再び僕の言葉を繰り返した。だがそこにはさきほどのような問い詰めるニュアンスはなく、純粋な疑問が感じられた。

「そう、浸透圧。液体が濃い方から薄い方へと流れるときに起こる圧力。口内炎に塩分がふれると痛むように、僕の心に『濃いもの』が触れると、痛みが起こるんだ」

 それを聞いた彼は、何も言わずに席を立った。見ると、瓶がすでに空になっている。

「冷蔵庫の二段目、瓶ビールはそこにあるよ。ハイネケンもまだ二、三本あったはず」

 僕はそう伝えた。しかし彼が持ってきたのは、スミノフだった。乳白色のガラス瓶に赤色のラベルが巻かれている。後で飲もうと思っていたのに。

「珍しいね。お前がスミノフ飲んでるのは見たことなかったけど」

「初めて飲む」

「なんでまた?」

「君が好きだっただろ、スミノフ。君が自分の話をするのは珍しいからな。せっかくなら君に合わせる」

「お前はそういうの、気にしない人間だと思ってたけど」

「そういう一面もあるのさ。君が気づいてなかっただけで」

 その言い方は何かを懐かしんでいるようだった。多分誰かが彼に「そういう一面」を植え付けたのだろう。僕ではないだれかが。

「それで、浸透圧だっけか。君のその偏食の原因は」

「偏食よりは、こだわりと言ってほしいけど」

 僕の言葉を無視して彼は続ける。

「つまりは、君自身が空虚で薄い存在だから、より強いもの、それこそ、誰かの温かい感情を摂取してしまうと、それに浸食されてしまう。結果的に自分が薄れていき、それが痛みに変換される」

「ありがとう、そういうこと」

 結構あやふやな話だったと思うが、どうやら伝わってくれたらしい。そうして僕が再びグラスに口をつけると、彼もスミノフを一気に飲み干した。

「すると、なんだ。君は自分のことを無価値な人間だと思っているわけかい?」

「少なくともね。お前の嫌いな、自信のないタイプの人間ではあるよ」

「別に構わないさ。そんなこと」

 彼は瓶をテーブルに置いた。二七五ミリリットルは、彼にとっての一口なのだ。

「いずれにせよ、君のそれはとても理論とは言えないな」

 彼は豪快に手で口元を拭い、それから何も言わずトイレへ行ってしまった。部屋には僕だけが残されて、なんだかハイネケンがまずく感じる。

 しばらく、僕は静寂の中に居た。目を閉じてみると、コポコポと僕の胃が揺れ動く音がした。中にあるのはハイネケンと、ピスタチオと、アーモンド。それと僕。

 

 僕は栄養機能食品だ。無味乾燥で、存在感が薄く、機能的だ。僕の四肢は四本の固形物で、胴体は黄色い箱なのだ。着ている服はアルミ質のパッケージで、背中に僕を構成するすべてが記載してある。つまり、僕は心無い人間なのだ。この心無いって言うのは、残虐とか、倫理観がないとかそういう意味ではなくて、自分がないという意味だ。

 何となく僕は立ち上がった。少しふらついた。多分頬は紅潮しているのだろ。僕は彼みたいに酒に強くない。

冷蔵庫を開けた。中にあるのは、ピーマンとタケノコ、それと牛肉が何パックか。それだけだ。明日は青椒肉絲を作る予定だ。彼が好きだから。

 下段を開けると、ハイネケンがあった。スミノフはなかった。彼が飲んだのが最後だった。

 その横のバスケットケースに目をやると、そこはやはり乾物であふれている。乾燥わかめやナッツ類。干ししいたけ。桃の缶詰があるが、これは彼が食べる。乾麺の袋、車麩、それと僕がある。

 やれやれ、と僕は呟いた。僕が僕のために買ったものは全て乾物で、あとはすべて彼のためのものだ。悲しいほどに、僕は機能的かつ一元的なのだ。

 その時、水洗トイレの音が聞こえて、彼がトイレから出て来た。

 僕は彼を見る。身長は百八十センチほどで、細いのに骨格が良いから、これまた大きく見える。指も僕より関節一個分は長いだろう。大食いで酒豪なのも、見た目にあっているし、そう思うと無造作に伸びた長い髪だって彼らしく見える。

「濃いなぁ、お前」

 僕がそう小さく言うと、彼はこちらを見た。その眼にはなにか、こちらへ浸出してくるような、ぬめらかでいて、確固としたものを感じる。

「君、もう酔ってるな。相変わらずだ」

 彼は軽く笑った。

「強い方が好き?」

「なんだっていいさ」

 それから少しして、心が痛んだ。

 

 ここだけの話だが、彼はよく栄養機能食品を食べるんだ。とはいっても週に一度ぐらいだけどね。

『二重螺旋』と「運命」について

 「結局はみんな、運命論者なんだ」

 僕が土乃目きこ名義で書いた最初の作品です。完成したのはつい先日ですが、実は取り掛かったのもつい先日のこと。何を隠そうこの作品四時間で作ったものなんですね。

 というのも、僕の所属する団体で他団体の合同部誌に参加するも締め切り直前で一人がドタキャンしたため、僕がその穴を埋めるべく代筆したんです。

 締切日まで一日の猶予しかなかったため、何を書くか迷う暇すらなかったんです。だから僕は自分の体験から引っ張ってくることにしました。

 幸いにも合同部誌のテーマは決まっていました。それは「運命」。運命をテーマに僕は自信の記憶をひっかきまわし、そのいくつかを無理やり継ぎ接ぎしてどうにか完成させたんです。我ながらよく書いたなと思う反面、拙い出来栄えだなぁとも後悔しています。

 さて、そんな「二重螺旋」ですが、特に語ることはありません。というか自分語りになってしまうので話したくないというのが本音です。

 「こんな作品を作っておいて、自分語りしたくないってのは無理があるんじゃない?」と思った方もいることでしょう。そうです、おっしゃる通りです。

 僕はこのブログという媒体を通して、自分語りをし、自己承認欲求を満たそうとしている気持ち悪い人間です。

 しかし、自分はできる限り自己表出は作品で行いたいと心に決めています。根拠はないのですが、そのほうが僕は自分に満足できるので。

 話が飛びましたし、前言を撤回するようですが、物語の補足を行ないます。でないと今回ブログ書いた意味がなくなっちゃうので。

  

 この「二重螺旋」は、山田(一人称)と、理子の運命が絡みあい、その形をすこしだけ変えるというお話です。二重螺旋構造のDNAを離して引き延ばすと、それらは二本の棒になります(実際にそうなるかは知りません。ごめんなさい)。例えその内実が同じでも、外見を変えることはよくある。そんな風に、少年少女の運命の行きつく先が同じ絶望であったとしても、我々読者には痛快な話に見えてほしい。そんな願いを込めて書きました。

 僕の想定では多分、山田の投げた椅子は理子の母を殺します。山田は殺人犯として少年院に、理子には消えないトラウマだけが残るでしょう。そうです。これはガチガチの悲劇なんですね。でも僕はこれを喜劇として描きたかった。その理由は、この話が少なくとも僕の体験から生じているからです。どんな形であれ、じめじめと過去の不満を書き、それを暗く終わらせることは「負けた」感じがしてなんかイヤだったんです。

 そんなこんなで、椅子を投げさせました。結果的には良いインパクトになったかなぁなんて思ってますし、ひ弱で女々しい僕自身の中にも、ロックな反抗心があったんだなと思えたので一石二鳥です。

 ちなみに、僕の小学校時代と中学校時代がこの話のモデルとなっています。異なる時間の僕自身を一つの物語で照らし合わせたらどうなるのかという疑問のもとに作っていました。そういう意味での「二重螺旋」というタイトルでもありますね。

 総括としてはこんなところですね。最後に運命について。

 親ガチャに代表される、決定論的で厭世的なあきらめムードが近年の主流であるように思われます、実際それを否定はしません。というか否定はできないです。僕が同じ苦しみを味わっているわけではないので。

 そんな退廃的なムード、「頑張るよりは要領良く生きよう」が僕らの世代のモットーになっているような気がします。これも否定はしません。僕もそうですし。

 けど、そんな時代だからこそ、明るく努力する人間は何倍も美しく、輝いて見えます。彼ら、彼女らは別に自分が運命に抗っているだなんて思っていません。だからこそきれいなんです。

 運命も受け入れ方次第だと思います。無視はできないけど、ずっと気にしていても何も変わりません。運命の特徴がその絶対性であるなら、人間の特徴は可変性です。変わらない運命を嘆くより、自身が変わろうとする人でありたいなぁと、今でも思っています。

「君、以外とクサいこと言うんだね。クールキャラぶってるのに」

 外野がうるさいので、ここらへんで終わります。では

 

 

二重螺旋

二重螺旋

土乃目きこ

 僕は時速一六〇キロで椅子を投げ飛ばした。

 

 白瀬理子はいつも自身の境遇をあっけらかんと話す女子だった。彼女が母親に殴られてその瞼を何倍にも腫らしてきた朝のホームルームの時でさえ、彼女は努めて笑顔を保っていた。硬く層を作った指の吐きダコも、放課後にすぐ帰宅する理由も、高校で使うような参考書を持ち歩かなければならない理由も、彼女は決して語ろうとはせず、聞かれれば笑い話としてごまかしていた。

「ほら私ってそういうキャラだからさ。急にシリアスになられても、みんな困っちゃうだろうし」

学級委員の仕事で、僕と放課後の教室で作業をする彼女はそんな風に言った。それは諦めたような言い方にも感じられたし、「自分はキャラを守れている」という自負の念を含んでいるようにも思えた。

「それにさ、人に自分のことを伝えたって、何かが変わるわけじゃないじゃん」

そう言う彼女の眼は僕を見つめている。そうだとも。僕に伝えたところで、君の境遇は変わらない。変えることはできない。

 

僕は僕で、理子と似たような生き方をしていた。人に愛されることは苦手だったが、人に嫌われないことは得意だった僕は、全てをのらりくらりとかわし、時には諦め、時には逃げ、流されるままに生きて来た。そんなある種の「現状放任主義」が僕らの共通点だった。

そんな僕と理子が意気投合? するのは、ある種の運命だったのかも知れないと思ったこともあった。気の迷いでそれを本人に伝えてみたこともあった。

「君、以外とクサいこと言うんだね。クールキャラぶってるのに」

 夕日の差す六月の教室で、理子は僕の言葉にそう返した。

「別に、お前だって僕の前だと化けの皮がはがれるだろ」

 それを聞いた理子は無邪気にはにかんだ。

「喜びなよ。私、愚痴なんて君だけにしかしないんだからさ」

 諦めることに慣れ切った僕らにも、この気持ちを分かち合いたい日がある。僕だって、洗面所の汚れ一つで罵り合う両親がどうしようもなく嫌いになってしまう時があるし、彼女にも、彼女の母の虐待でしかない過剰な教育を愚痴りたい瞬間がある。

 一週間に一回の、放課後の一時間、委員会活動という名目を得たこの一時間だけは、僕らは互いのキャラクターを越えて語り合った。

 

「私たちみたいな人間のこと、『運命論者』って言うんだって。最初から全ては決まっているから、全てを受け入れて生きていく人間のこと」

 英語の参考書を開きながら、彼女は言った。夏休みが明けた九月から、彼女の勉強量と体の傷は増え、僕の家ではさらなる怒号が飛び交い始めた。彼女はもはやこの放課後の時間であろうと、ペンをとる必要に駆られていた。世間一般で言う、高校受験が近づいてきていた。

「そういえばさ、君はどうするの? 高校。やっぱり……」

「僕は行かない」

「そっか」

 兄の大学費を圧迫してまで、僕が高校に行けるはずがなかった。

「でも、行きたいでしょ」

「そんなに」

嘘ではなかった。以前はそう思っていたこともあったが、今は違う。進学したいと父に伝えたとき、僕は彼の静かな怒りを見た。そこには「聞き分けが良いことだけが取り柄の、頭も良くないお前がどの口を聞いてるんだ」という気持ちがありありと感じとれた。それを見た瞬間、かすかなやる気も消え失せた。

「お前はどうなんだよ。受かりそうなのか? 第一志望」

そう聞くと、彼女の顔は途端に曇った。

「別に言わなくていいよ」

「ううん、隠すことでもないし。でも、正直このままだとまずいかな」

 暗い表情を一瞬だけ見せた後、彼女はすぐに「まあ、わたし容量悪いポンコツだから」と作り笑いでごまかした。

 お互いにすでに気づいていた。例えこの場に二人しかいなくとも、本音を話しあえなくなってきていたことに。一度口を開いてしまえば、自分のすべてが口をついて出てしまうと

僕も思っていたし、多分彼女もそう思っていた。

 重くなった夕焼けを見て、先月よりも時間たつのが速いと、確かにそう感じた。

 

「運命論者、フェイタリスト。運命論を信じるもの。厭世的、ネガティブな意味で使われることが多い」

 彼女は手に持つ英単語帖の一文を読み上げた。先月使っていたものより、それはひとまわり分厚い。

「だってさ。なんかこれ、見方が偏ってない?」

「そんなもんじゃない。あんまり聞いてていい感じはしないし」

僕は淡泊にそう返した。

「よくない! 私たちのアイデンティティが下に見られてるんだよ」

「それはどうでもいい」

 そう言うと彼女はふくれっ面をわざとらしく作った。

「でも、僕ら以外の人が前向きで、ポジティブだって言うのは違うと思う」

 だって、彼らが僕や、彼女のような家庭に生まれたとして、それをありのまま現実と捉え、前向きで居続けられはしないと思うから。

「これが運命だって、諦めることぐらいは許してほしい」

 十月に入って、夕焼けはさらに短くなった。それと比例するように、彼女の母親が彼女を殴る機会が増え、僕の父親が母親を殴る機会も増えた。

 

 十一月に入る前、僕の家はついに崩壊した。今年中に両親の離婚が決まった。

 離婚届を持ち出したのは、いつも何も言わず、現状に耐え続けてきた母だった。兄が医学の道に進むために選んだ一年の浪人生活は母の心をとっくに壊してしまっていたらしい。

 母は、最初はおだやかそうに喋り出した。しかし、話が難航してくると状況は一転、鍋をひっくり返したように怒り狂い、父へ殴りかかった。父は父で、そんな母の姿をこれまで見たことがなかったのか、それとも母が反抗するなんて思っていなかったのか、その豹変ぶりにたじろいでいた。久々に帰宅していた兄は、二人に全くの無関心を貫いていた。実際、喚き散らす母に辛抱つかなくなって蹴り飛ばそうとする父の横を平然と通り、コンビニに行ってしまった。そしてそのまま帰ってこなかった。

 僕はただその光景を眺めていた。なにが起こっているかは、理解しようとしたらすぐにできてしまうので、ピントをわざとずらして、この光景を認識するだけにしていた。

 けれど、このボロ家の天井を割るような怒号が始まって三十分後にはそれもできなくなってしまった。

 もはや何をすればいいのか、疲弊しきって答えを出すことに疲れてしまった両親が、僕を同時に見つめてきたからだ。

僕は二人が何を望んでいるのか分かっていた。そして、彼らが自分の口からは言いたくなく、自分たちの自慢の長男の口からもそのセリフを言わせたくなかったことも分かっていた。

 僕は僕のキャラクターを、役割を、立場を、そして運命を理解していた。だから、望まれことを、望まれたとおりに実行した。

「父さん、母さん。離婚してください」

 

 十一月中、彼女は最初の委員会活動にしか顔を出さなかった。家での出来事が一息つき、受験もしない僕と違って、彼女は忙しかった。それは授業中の雰囲気からも容易に分かることだった。

 つい最近彼女は授業中の内職がバレて参考書を没収されていたが、その時の顔が印象的だった。それは反省でも、子供らしい怒りでもなく、恐怖を宿していた。

後から知ったことだが、彼女は同日に塾で行われるテストの予習をしていたらしい。次の日までその参考書は没収だと知り、愕然とした顔で授業を終えた彼女は、翌日になると目に青タンを作って登校して来た。

 彼女が虐待を受けていることは明らかだったが、それに言及する大人はいなかった。しようものなら、彼女の母親が血相変えて学校まで乗り込み、クレームを入れるからである。

 児童相談所へ押しかける教師なんて一人もいなかった。彼らにとってそれは「時間外業務」にすぎず、給料に代わってストレスが発生する仕事なんて誰もやろうとしなかった。

「結局はみんな、運命論者なんだ」

 夕焼けと夜が混じる放課後の教室で一人、僕は溢した。

 彼らは見て見ぬふりを選んだ。それが彼女の運命だと、そう考えて諦めた。彼らがたとえ「助ける勇気がなかっただけだ」と言ったとして、誰もそれが本当だったかなんてわからない。それに、彼女には今その瞬間しか存在せず、その瞬間の運命に翻弄され続けている。必要なのは言葉ではなく、行動だ。彼らは結局、「彼女を助けられない運命」を認め、ただそれを受け入れているだけだ。

 でも、それは僕だって同じだった。

 

十二月は最後の三者面談月間だった。一般受験を選ぶ生徒は、ここで志望校や滑り止めを確定させた。無論僕には関係のない話だったが、彼女は違った。

水曜日の放課後、図書館で時間を潰した後、何気なく教室前の廊下を通り過ぎると、彼女が教室にいるのが見えた。母親と、担任と、彼女。三人が座って話していた。

僕はつい魔が差して、ドア越しにその会話に耳を立てた。

「滑り止めはここ以外に受けないのかい?」

 困惑する担任の声が聞こえた。

「ええ」

 彼女に似た、しかし彼女の声を悪意的に捻じ曲げたような返事がした。彼女の母の声だ。

「何か問題が?」

「問題というかですね、万が一落ちた場合を考慮しますと……」

「浪人させます」

 強く言い切った母親の声に、ひと際若い声が驚いたようにはねた。僕は恐る恐る顔を上げ、ドアについたガラス部分から中の光景を除いた。するとそこには、青ざめた彼女の顔があった。

「ちょ、お母さん! 聞いてないよ!」

「当然よ。言ってないもの」

切れ長な目つきの母親が娘の言葉を一蹴した。

「あなたに言う必要がある? あなたは真っすぐ勉強だけしていればいいのよ」

 それを聞いた彼女は、顔を歪ませたあと、ひとしきり俯いた。でも、僕は知ってる。彼女は絶対に逆らわない。

その予感は的中した。案の定、彼女はいつもみたいに精一杯の作り笑いを浮かべた。

「そうだよね。私ポンコツだから、勉強だけしてればいいよね」

 声は崩れ落ちるように震えていた。彼女の運命が確定してしまったように思えた。

 僕は不思議とそれが許せなくて、気づけばドアを開けていた。

「理子はあんたのおもちゃじゃない」

 突然現れてそう述べた僕に一番驚いていたのは彼女だった。本当にただ、僕の存在が信じられないというように目を丸くしていた。教師は教師で驚きつつも、もめごとにならないよう僕に退室を促そうとした。しかしそれより先に、彼女の母親が僕に食いついた。

「あなた誰? 急に失礼じゃない。どんな教育を受けてきたの?」

 僕はその言葉を聞かず理子の方を見る。

「理子。訂正しろ。お前はポンコツじゃないし、勉強だけする理由もない。お前は母親の言いなりになる必要なんてない」

「でも……」

「お前の母親はお前の運命じゃない」

 自分でもなぜここまでやっているのか良くわかっていなかった。自分のことに関してはあれほど無関心になれた僕が、今では他人に対してここまで干渉している。自分のキャラクターを、主義を、そして運命を飛び越して、何かに抗っている。

 無視をされた母親の矛先は僕に向かず、彼女に向いた。きっと彼女を傷めつけて、自分の安心を図るつもりなのだろう。

「理子、あなたね。こんなバカなガキとなんで知り合いなの? なに? お母さんをだましていたの?」

 そう言って彼女の首を万力のように締め始めた。教師は何をするでもなく、ただ慌てることしかできていなかった。

 彼女の口からかひゅうと音が漏れた。力ない音だった。

「やめてほしかったら、ちがうと言いなさい。あんな男は知らないと言いなさい」

 彼女の細い首筋が引き延ばされていく。すでに彼女は目に涙をため、降参しきっているように見えた。

「ひ、い、言います! 言います!」

 それを聞いた母親は力を緩めた。彼女はそれで呼吸を取り戻した。荒くなった息を整えようとするその手は小刻みに震えている。

そうして、母への謝罪と、僕に対する拒絶の言葉を継げようと、彼女は口を開いた。

 だがその時、理子は僕と目を合わせた。彼女が僕の瞳に何を見たのかは分からない。少なくとも僕は、彼女の腫れた瞼の下の眼が、僕と同じ色に変わるのを見た。

 それから彼女は深呼吸して、叫んだ。

「誰が言うかくそババア! 私はあんたのオモチャじゃねーし、山田は私の友達だ!」

 それを聞いた瞬間、母親の額に青筋が走り、彼女の首を再び締め上げ始めた。横で見ている僕にも分かる。あれは殺す気だ。

 彼女を救わなきゃ。

 そう思った僕は、気づくと近くの椅子を手に取っていた。そしてこちらに背を向ける母親の頭に狙いをつけ、すでに振りかぶり始めていた。その重さに、一瞬相手の命を心配したが、すぐにそんな考えは飛んで行った。

一連の動作は、自分でも驚くほどスムーズに行われた。もしかすると、この結末すらも運命だったのかも知れない。

 しかし、それも今となってはどうでもいい。これが決められたことであろうと、そうでなかろうと、些細な問題だ。僕と彼女の運命が交差して形を変えた。多分それだけのことなのだろう。

 迷いなどあるはずもない。

 

 僕らの静かな怒りは、時速一六〇キロで飛翔した。

 

自作小説について

 詳しく調べたわけではないのでわからないのですが、ひとまず小説はこのブログの形式で直に打ち込んでしまおうと思います。

 多分「小説家になろう」や「ハーメルン」といった投稿サイトを通して、リンクを張るなどした方がやりやすいのかもしれないのでしょうが、はっきり言って面倒です……

 知らないサイトに飛ばされた先で、ログインとか色々させられて、じゃあそもそも別のサイトだけ使えばよくない? みたいな意見が出てきそうだし、何より僕自身がそう思っちゃってるんですよ。

 なのでもうこのままここに貼る! ほんとは縦読みにしたいけど、この際関係ない!

 ってことで、たまに変なタイトルのブログを更新されたら、それが創作物ということになります。誰も見ないのでいらぬ注意文だとは思いますが、僕はこういうの嫌いじゃないです。そこに意味がなくても、形式をなぞって、いわゆる「ごっこ遊び」をするのが好きなんですよ。これだって、まるで僕が有名ブロガーになって、新ブログ立ち上げの準備をしている気がして、勝手にワクワクしてるんです。

 「これは意味や実用性から離れた、単なる趣味だ」って割り切れるとなんでも楽だし、100パーセント物事を楽しみ切れるってものですよね。それはそれで難しいんですけど。

土乃目きこはブログを書く。土乃目きこは小説を書く。

 インターネット上での活動はこれまであまりしてこなかったのですが、知り合いの影響で、少しづつですが関わるようになってきました。というより、意識的にしている面が大きいですね。このブログもその一環で、作品の感想だったり、日常のあれこれを、Twitterよりは長い文体にしてみようという試みです。

 さて、僕は他の場所では基本的に「蕨餅」というユーザーネームを用いているのですが、ここでは「土乃目きこ(どのめきこ)」として活動するつもりなんです。というのもこの名前、最近決めたペンネームなんですね。私事にはなるんですが、最近趣味として小説を書くようになりまして。それをある団体に寄稿するときに、便宜的でもいいのでペンネームが欲しいということになり、この「土乃目きこ」を作ったわけなんですね。

 そんなわけで僕、ときおりここに自分の著作物を載せるつもりです(できるかどうかは知らないが)。基本的には一万字以下の短編を、ときおり中編や長編も書きたいななんて思ってるので、定期的にここを除いてくれると助かります。小説を見るかどうかは、僕の力量次第ですので、立ち寄ってくれるだけでいいです。

 これが最初のブログとして残るのですが、自己紹介だけではつまらない。ということで、今回はこのペンネームの由来でも軽く話します。

 僕は先ほども言った通り趣味で小説を書いているんですが、これはそんな作品の一つ、そのキャラクター名をそのまま取って来ました。ですからこんなネカマみたいな名前になっているわけですね。ちなみに、構想段階ですでに破綻している作品なので、完成はしないでしょう。永遠に。

 そんな墓場と化しているこの作品、メモ帳欄には『魔法少女モノ3』という便宜的な数字の羅列と共に埋葬されているわけですが、そのまま捨てるのも惜しいなぁと僕は常々思ったりしてました。可愛いキャラ、性癖キャラ、自己投影してるキャラ、僕自身のいろんな側面を、それぞれの登場人物が反映してて、どれもだい好きなんですよ。

 そんな子たちの中で、一番ネーミングがうまくいったのがこの「きこちゃん」だったんです。「曖昧と絶対の自己矛盾」、昼行燈だが、正義心の強い少女。夢迷子としては、土属性を司るペンタゴンのスートに感応し、自然法則を操って戦います。

 とまあ、こんな設定ばっか詰め込んでるから破綻するわけですね、恥ずかしい。

 彼女の名前を決める一番最初に、漠然と柔らかい名前をつくりたいなって思いが僕にはありました。それで下の名前を作った時に、擬音っぽくしようとしたんです。最初はぴんとかぱんとか、くるんみたいなところから始めて、かこっという音にたどり着きました。そのままだと加古、佳子みたな普通の響きになってしまうので、同じカ行を順にあてはめてみたところ、「きこ」というのが妙にしっかり来る。よし、これにしようといった感じですぐに決まりました。ここら辺に迷いは全然なかったのですが、意図せず一番気に入るものが出来ましたね。ちなみにですが、もともと「機子」という漢字を当てていたのですが、やめました。気に入らないとかではなく、ひらがなの方がどことなく可能性や解放感を感じるなと思ったからです。もし他の作品に出すときは、逆にいろんな当て字をしてみても面白いかも?(奇古、喜戸みたいに)

 上の名前はキャラクターとしての役割から決めました。土属性を象徴するためにそのまま土を入れました。それから昼行燈な彼女の性格を象徴する「どのみち~」という言葉をくっつけました。「土乃道」でもよかったんですが、「土乃目」の方がなんとなく気に入ったので、それがそのまま名字となりました。

 はい、こんな感じでしたね。思い返すと、結局は「なんとなくこっち」と言う風に軽く決めちゃってますね。けど自分の第六感が選んだ選択肢だと解釈すれば、それはそれで特別感がでてくるものだと考えてます。小説を書いている時も、たまに浮遊感のある表現なんかを理由なく書いてしまうことが多いのですが、そんなメンタリティなのでそのまま直さず投稿してます。なので気に入らない人もいるかもね。

 長々と書きましたが、多分ブログってもっと長々書くものなんでしょうね。分かりませんが。とりあえず今後とも、「土乃目きこ」をご贔屓にお願いできればうれしい所存です。それでは。

「○○~なに書いてるの?」

「ん? ブログだよ」